幼い頃に父親に買って貰った釣魚図鑑で憧れたロウニンアジ。南の海の大物に当時から憧れがあった自分は、「いつかはロウニンアジを釣りたい」と夢見ながら、子供の頃親父に釣りに連れて行って貰っては、遥か南の海から黒潮に乗って死滅回遊してくるメッキを狙って狂ったようにルアーを投げていた。
仕事を辞めて自由になった僕の最初のターゲットは、南の海の大物「ロウニンアジ。」と決めた。船からではなく陸から釣り上げる。それなりの道具を揃えて南の島へ渡った。釣れるまで現場に居ようと決めたので自給自足のサバイバル。釣った魚は捌いて何でも食べた。
豪雨が何日も続いて虚無の日を過ごしたりシケに拒まれた日は時間が流れるのをボーッと待つ。2か月前まで毎日パソコンに向かって仕事をしていたのに今や罪悪感も無ければ焦りも無い。ただ、幼い頃からの夢を叶えに来た。
ロウニンアジは夜、産卵に接岸するトビウオを狙ってやってくる。総重量1kgを超えるタックルを一晩中キャストする重労働。灯り一つない漆黒の闇の中、五感を働かせて周囲の様子を感じ取るのは想像以上に神経を擦り減らした。東の空が明るくなると、やっと夜が終わったと少しホッとしながら竿を畳んでキャンプ地に戻る日々。
夜が来た。ポイントへ向かう。午後9時頃、ムンと漂う魚臭いが鼻をついた。ボラの臭い?と思ったのはトビウオの産卵による接岸だった。やがて闇の中でもハッキリと判る巨大な水柱が沖からやってきた。あれが自分の狙っているロウニンアジの接岸だと直感でわかった。千載一遇のチャンスが巡って来た。
ルアーを水柱へ目掛けてフルキャスト!着水後、ゼロテンションでカウントダウン。数秒で竿がひったくられリールのドラグが唸る!徐々にドラグを締め込んで竿を曲げ込んでいくが止まらない。
そう、本当にデカ過ぎたのだ。ファーストヒットはまさか、この年の島のレコードになるロウニンアジだった。つづく