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船長釣昔話⑤話「15年越しの夢」

千載一遇のチャンスでヒットさせた大物、今まで釣って来たヒラマサとはケタ違いのパワーでドラグを引き出していく。あまり走られれば根ズレでラインブレイクは必須。

今俺の針に掛かっているこの魚を逃したら、もうチャンスは無いかもしれない。未熟ながら全力で挑む。竿を曲げ、出来る限りドラグを締め魚にプレッシャーを掛ける。その暴力的な引きと明らかな重量感。

「気持ちで負けたら絶対獲れない」
その一心で全力で魚と向き合った。この魚が人生で一番の大物になるような気がして仕方なかった。とにかく夢中だった。

一体どれだけ走られただろうか。隙あらば少しでもリールを巻く。少しずつ縮まる距離。やがて少しずつ姿が見えて来た。

ヘッドライトの灯りを嫌うのか右に左に走り回り、最後の足元際の張り付き。身体を横にして体高のある魚体を活かし水圧で浮いて来ない。

こっちの体力もだいぶ消耗している。とにかく足元の根にラインが触れない事だけを気を付け、最後の力を振り絞って魚を浮かせた。

水面に一度浮かせた魚は観念したようで大人しかった。降参とばかりに、長い胸びれをパタパタさせていた。

足場の高さは10mを超えていた為、最後は島の方や居合わせたアングラーの皆様の協力を得て巨大特注落としダモでの取り込んで頂いた。

高所恐怖症の俺は漆黒の闇の中、始めから怯んだ状態でファイトしていた。タモに魚が入ったと聞いた時には、緊張と恐怖と興奮と色々な物から解放され文字通り、燃え尽きた。

釣り上げたのは45㎏の大物ロウニンアジ。俺のファーストGT。心の底から震えた。

魚をリリースした後、倒れるように天を仰ぐ。そこにはまるで俺を祝福してくれているかのような、見た事の無い満点の天の川が広がっていた。随分と遠くへ来たもんだ。

幼い頃に南の海の大物「ロウニンアジ」に憧れてメッキを夢中になって追い掛けていた頃から15年の時間が経っていた。

視界が涙でぼやける。思わず嬉し泣き。今、この瞬間。世界で俺が一番幸せだと思った。